「人がいるから売れる環境」を。居酒屋「八剣伝」のマルシェが挑む、スキマバイトとOB・OG活用のハイブリッド戦略
外食業界の構造的な「人手不足」に対し、スキマバイトの活用が一般的になる一方で、教育コストや店舗への愛着の希薄化といった課題も浮き彫りになっています。「八剣伝」や「餃子食堂マルケン」など居酒屋ブランドを直営およびフランチャイズ形式で全国展開しているマルシェ株式会社は、「人がいるから売れる環境をつくる」という戦略のもと、スキマバイトを使いながらも、過去のスタッフ(OB・OG)を即戦力として呼び戻す「らくしふ タレントプール」を導入しました。
外部人材と自社OB・OGにより、安定した店舗運営の実現を目指すという、同社の執行役員の和唐様に、その合理的な人材戦略の狙いを伺いました。
居酒屋業態に選択と集中で挑み、エリアを拡大した店舗展開
まずは御社の事業内容について簡単にご紹介いただけますか?
和唐様:マルシェ株式会社は、外食産業の中でも特に居酒屋業態を中心に展開しています。現在は約10種類のブランドを持ち、創業ブランドの「酔虎伝」から始まり、主要ブランドは「八剣伝」で関西を中心に店舗を拡大してきています。過去にはとんかつ店やラーメン店など昼営業に挑戦したこともありますが、私たちの運営スタイルでは思うような結果が出ず、苦戦したこともありました。
そうした経験も踏まえて、現在は選択と集中で居酒屋業を主軸に展開しています。今後は「数多くの業態を展開する」のではなく、「これだ」と思える一業態を見極め、ドミナント展開していく方針です。
和唐様は、どのような役割を担っていらっしゃるのでしょうか。
和唐様:私は現在、直営推進部の執行役員・部長を務めています。主に関西の直営店を管轄しながら、全社的な経営にも関わり、成果の出た取り組みを他エリアへ展開していく役割を担っています。
私のミッションは「店舗利益の最大化」です。利益を伸ばすには当然ながら売上を上げなければなりません。そして、その売上を生み出す源泉は「人材」です。人を集め、育成し、売れる体制を整えることが不可欠だと考えています。
確かに昨今は原材料費や光熱費などのコストが上昇し、管理の難しさも増しています。しかし、コスト削減だけでは企業の未来は描けません。大切なのは、店舗で力を発揮できる人材を安定的に確保し、チーム全体で売上をつくる環境を整えること──これこそが、私の最大のミッションだと思っています。
「働き方の自由」を重視する時代に変わり、採用と定着の壁に直面していた
店舗利益の最大化に欠かせない人材確保において、どのような課題に直面されていたのでしょうか?
和唐様:利益を上げるためには、やはり「売る体制」を整えることが欠かせません。その体制を支えるのが人材ですが、ここに大きな壁があります。最大の課題は「人が集まらない」こと、そして「集まってもすぐに離脱してしまう」ことです。アルバイトも社員も応募が少なく、せっかく採用できても数か月で辞めてしまうケースが多い。結果として、常に人手不足に悩まされてきました。
特にアルバイトは掛け持ちが当たり前で、ひとつの店舗への愛着が昔に比べて薄いと感じます。社員についても状況は同じで、特に店長クラスの確保が非常に難しい。今は業界全体で店長候補の取り合いが起きていて、人材紹介会社に依頼すれば100万円以上の費用がかかることもあります。優秀な人材ほど採用コストが跳ね上がり、さらに定着するかどうかはまた別の問題です。人材確保のハードルは年々高まっていると実感しています。
人材不足の背景には、コロナ禍の影響も大きかったのでしょうか。
和唐様:はい、コロナ明けはひとつの転機でした。時短営業や休業が続くなかで、アルバイトや社員には休業手当を支払って対応しましたが、営業を再開しようとしたときに人材が戻ってこない。多くの学生やフリーターが別の仕事に移ってしまっていたのです。その結果、「人は必要なのに集まらない」という状況が一気に表面化しました。
ただし、この課題はコロナだけが原因ではありません。かつては「お店の予定を優先して働いてもらえる」ような雰囲気もありましたが、いまはそうはいきません。学生にとって学業やプライベートを大切にするのは当然のことで、社会全体が「働き方の自由」を重視する時代に変わっています。だからこそ、私たち企業側も昔ながらのやり方に固執するのではなく、考え方を柔軟にアップデートしていく必要があると感じています。
店長クラスの人材不足は特に大きな課題だとおっしゃいました。店舗にどのような影響が出ているのでしょうか。
和唐様:店長が不足すると、結局アルバイトリーダーや中堅社員が現場を仕切らざるを得ません。もちろん彼らが自立して店舗を運営できるのは心強いのですが、本来であれば店長がリーダーシップを発揮してチームを導くべきです。
バイトリーダーが中心になって店を切り盛りしている店舗もあり、スピード感や対応力は素晴らしいものの、過度な負担がかかり、将来的な離職リスクも高まります。結果として「人がいないから回す」「回すけれど長くは続かない」という悪循環に陥ってしまうリスクがあります。
「従来の採用では追いつかない」危機感からスキマバイトを導入
このような人材不足に対し、スキマバイトを導入されたきっかけや当時の様子を教えて下さい。
和唐様:導入のきっかけは、コロナ明けの営業再開時でした。休業手当を支払って雇用を維持していたものの、いざ再開となった時に、多くのスタッフが他業種へ移っており、手元に人が残っていませんでした。社員も疲弊し、従来の採用手法では到底追いつかない。そんな危機感から「スキマバイトを活用してみよう」と決断しました。
当初、現場からは「教える手間が増える」「リズムが崩れる」といった戸惑いの声もありましたが、業界全体でスキマバイトが浸透していく中で、店舗側も「欠かせない仕組み」として徐々に受け入れていきました。
具体的に成果をあげた店舗の事例はありますか?
和唐様:うまく活用している店舗に共通しているのは、良い人材には継続的に声をかけて「次もきてね」というコミュニケーションをすることですかね。リピーターを増やす工夫を重ねて、今では「スキマバイトがいなければ店が回らない」というレベルまで活用が進んでいます。
最初は導入に消極的だった店舗でも、「教え方を工夫すれば即戦力になる」と気づいてからは、1日に3名の枠を活用するほど使いこなしています。リピートしてくれる方が増えると、もはや常連スタッフのような存在になり、今では欠かせない戦力になっています。
スキマバイトは一時的な穴埋めだけでなく、店舗運営の質そのものに影響を与える存在になりつつあるのですね。
和唐様:そうですね。スキマバイトは「場当たり的な応急処置」と見られがちですが、実際には店長や既存スタッフのマネジメント力を映す鏡のような存在です。活用できる店長は、コミュニケーションも柔軟で、チーム作りもうまい。そうした違いが表に出やすい仕組みだと感じています。
卒業生への声かけを仕組み化し、より安定した店舗運営を目指す
スキマバイトの活用を進める一方で、「らくしふ タレントプール」も導入されましたね。背景にはどのようなお考えがあったのでしょうか。
和唐様:私たちが目指しているのは「スキマバイトに頼らず店舗が安定した運営体制をつくる」ことです。スキマバイトの的確な活用は一つの成果ではありますが、ゴールではありません。そこから次のステップに進むために導入したのが、「らくしふ タレントプール」です。
かつて店舗を支えてくれたスタッフ(OB・OG)の人材情報を蓄積し、即戦力として必要な時に声をかけられるシステムは、店舗運営の安定性に直結するので、とても魅力的でした。
OB・OGが即戦力になる理由について、詳しくお聞かせいただけますか。
和唐様:居酒屋の仕事は想像以上に幅広い力が求められます。スピード感、状況に応じた対応力、先を読む予測力。さらにホールリーダーは、シフト調整や新人教育まで含めてマネジメント力も身につける必要があります。私はアルバイトスタッフにも「居酒屋の仕事を全部できたら、どこでも通用する」と伝えてきました。
一度社会を経験したOB・OGは、社会の厳しさも知っている分、責任感と安定感が違います。自分の価値を客観的に捉え、周囲に流されず改善を淡々と進めることができる彼らは、現場にとってこれ以上なく非常に頼もしい存在です。実際、再雇用で戻ってきたスタッフの多くが、早い段階で上のポジションに就いています。
「らくしふ タレントプール」には、どのような強みがあると感じますか。
和唐様:最大の強みは、一度社会を経験しているOB・OG人材とのつながりを仕組み化できる点だと思います。これまでも店長が個人的に卒業生に連絡するケースはありましたが、その都度の契約や労務管理が煩雑で、現場にとっては大きな負担でした。
「らくしふ タレントプール」なら、情報の蓄積から声掛け、契約までが仕組み化されます。店長にとっても「毎回お願いするのは気が引ける」という心理的ハードルも下がります。OB・OG側も、「また働きたい」と思ったときに自然なかたちで戻って来られる。当社の店舗で経験を積んだOB・OGに声をかけられるので、教育負担が少なく、すぐに活躍していただけるのが大きな魅力です。「らくしふ タレントプール」の仕組みは、店舗の安定化において非常に合理的だと考えています。
まずは直営店での導入が鍵。店舗に寄り添ったサポートが信頼につながる
導入の流れはいかがでしたか。
和唐様:まずは私の管轄エリアの直営店で小さく試しました。私たちはフランチャイズ加盟店も抱えているので、直営での実績なしに「これを使ってください」とは言えません。直営で成果を出し、それを数字として示したうえで加盟店に紹介する、この流れを重視しました。
加盟店に導入を勧めるからにはやはり「直営で成果が出ている」という事実が不可欠ですが、実際に導入すると短期間で効果が見え始めました。結果、半年足らずで他のエリアにも広がっていきました。導入のコツは「小さくチャレンジして、大きく広める」。そのプロセスを踏んだことで、現場も納得感を持って取り組むことができたと思います。
導入を進めるうえで、弊社のサポート体制はいかがでしたか?
和唐様:サポート体制は非常に手厚いと感じています。特に印象的だったのは、単に進捗報告をするだけではなく、同時に改善提案をしてくれることです。「数字はこうなっていますが、次はこう改善していきましょう」と常に前進させてくれる。その姿勢が信頼につながりました。
特に導入後のフォローアップが細やかで、店舗側に寄り添っているのが伝わります。加盟店への展開がスムーズに進んだのも、サポートがあったからだと思います。他社のサービスも見てきましたが、ここまでしっかり寄り添ってくれるケースは珍しい。「らくしふ タレントプール」の強みだと感じています。
人材の安定確保と店舗の負担軽減に、「らくしふ タレントプール」は欠かせない
最後に、今後「らくしふ タレントプール」とどのように向き合っていきたいとお考えですか?
和唐様:安定した店舗運営の体制を目指すために、スキマバイトは今後も活用していきますが、それはあくまで一時的な補助であり、店舗運営のゴールではありません。私たちが本当に目指すべきは、自律的に安定して回る店舗運営の体制をつくることです。
そのプロセスにおいて、一度離れたOB・OGが戻ってこられる仕組みがあることは、現場にとって非常に心強い。頼りにさせることで、彼らも「またこの店で働きたい」と思いやすくなります。売上を支える人材を安定的に確保し、店舗の負担を軽減する。その仕組みづくりに「らくしふ タレントプール」は欠かせないと感じています。
※内容は取材当時のものです。現在の情報とは異なる場合があります。
導入事例一覧へ


